神戸地方裁判所 昭和53年(ワ)656号 判決
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【判旨】
二原告の本訴請求は、要するに、原告は被告が智恵子所有にかかる本件土地につき、不法に根抵当権設定仮登記を経由したことにより、損害を被つたが故に、不法行為に基づき、その賠償を求めるというものである。
不法行為における相当因果関係の範囲内の損害とは、通常、侵害行為の対象となつた被害法益の帰属主体本人(直接被害者)に生じた損害を意味し、被害法益の帰属主体本人以外の第三者(間接被害者)の損害を含むものではない。ただ、民法七一一条に基づく場合、その他間接被害者であつても、直接被害者と経済的に同一体である等の特別の事情があるときは、相当因果関係の範囲内のものとして加盟者等に対し、損害賠償を請求し得る余地はあると解されるものの、右解釈が適用されるのは、直接被害者の被害法益が生命、身体等極めて限定された場合であり、本件の如く、被害法益が土地所有権である場合には、所有者に生じた損害のみが相当因果関係の範囲内のものであり、間接被害者に損害が発生したとしても、到底相当因果関係の範囲内のものとは解し難い。
三これを本件についてみるに、被告が右仮登記を経由したことが違法な所為であると仮定し、さらにまた原告主張の損害が発生したと仮定しても(もとより右損害が発生したと認めるに足る証拠はない。)、証人永本哲士の証言によると、原告は智恵子と昭和四五年頃まで内縁の夫婦として同居していたが、その後内縁関係は解消されたものと認められるからして、本件根抵当権設定仮登記時において、原告と智恵子との間に経済的同一体である等の特別の事情はないことはもとより、被害法益が土地所有権であるからして、所有者ではない被告の損害と不法行為との間に相当因果関係を認め難い。
(渡部雄策)